法人を設立したばかりの経営者や、毎年の決算で「もっと税金を減らせないか」と悩む方にとって、役員報酬の設定は最初に検討すべき節税策のひとつです。役員報酬の決め方ひとつで、法人税・所得税・社会保険料のバランスが大きく変わります。この記事では、役員報酬を活用した節税の仕組みを、具体的な数字とともわかりやすく解説します。
なぜ役員報酬が節税につながるのか
法人が役員報酬を支払うと、その金額は損金(経費)として法人の利益から差し引かれます。つまり、法人税の課税対象となる所得が減少するのです。
たとえば、法人の税引前利益が1,000万円あった場合、役員報酬を500万円支払えば、法人の課税所得は500万円に圧縮されます。法人税率を約25%と仮定すると、課税所得が500万円減ることで約125万円の法人税節税が期待できます。
ただし、役員報酬は受け取った役員側で給与所得として課税されます。法人での節税メリットと個人の税負担をトータルで考えることが重要です。
税務上、損金として認められる役員報酬の3つの種類
役員報酬であれば何でも経費になるわけではありません。税務上、損金として認められるのは以下の3種類に限られます。
① 定期同額給与
毎月同じ金額を支払う最も一般的な方法です。事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、その後1年間は原則として変更できません。途中で増減させると、変更分が損金不算入(経費として認められない)になるため注意が必要です。
② 事前確定届出給与
あらかじめ税務署に届け出た金額を、届け出たとおりの時期・金額で支払う報酬です。役員賞与をこの方法で設定することで、賞与も損金に算入できます。支払日や金額を厳密に守る必要があります。
③ 業績連動給与
会社の業績に連動して支払われる報酬です。主に上場企業向けの制度であり、中小企業での活用は一般的ではありません。
最適な役員報酬額の考え方
役員報酬を高く設定すれば法人税は減りますが、個人の所得税・住民税・社会保険料が増えます。逆に低く設定すれば個人の税負担は軽くなりますが、法人に利益が残り法人税がかかります。
法人税と所得税の「損益分岐点」を探る
一般的に、所得900万円を超えると所得税率が33%以上になるため、役員報酬が高すぎると個人の税負担が重くなります。一方、法人税率は中小企業の場合、課税所得800万円以下は約15%(地方税含む約23%)、800万円超は約23%(同約34%)です。
具体例として、法人の利益が1,200万円の場合を考えます。
- 役員報酬を600万円に設定した場合:法人課税所得600万円 → 法人税約138万円。個人は給与所得控除後の所得約444万円 → 所得税・住民税約71万円。合計税負担:約209万円
- 役員報酬を1,000万円に設定した場合:法人課税所得200万円 → 法人税約46万円。個人の所得約834万円 → 所得税・住民税約170万円。合計税負担:約216万円
このように、単純に高くすればよいわけでなく、法人と個人を合わせたトータルの税負担で最適額を判断することが大切です。
社会保険料も忘れずに考慮する
役員報酬が増えると、健康保険・厚生年金の社会保険料も増加します。社会保険料は法人と個人が折半で負担するため、報酬が上がるほど法人・個人双方のコストが増える点も考慮が必要です。ただし、将来受け取れる年金額が増えるというメリットもあります。
役員報酬を設定する際の実務上の注意点
変更できるタイミングを把握しておく
定期同額給与は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内に改定する必要があります。業績が好調でも期中に増額すると損金算入が認められません。毎期の決算終了後、速やかに翌年度の報酬額を検討しましょう。
「不相当に高額な役員報酬」は損金不算入
役員報酬が同業他社の水準や、その役員の職務内容に対して不相当に高額と判断された場合、超過分が損金に算入されないことがあります。根拠のある金額設定と、議事録などの書類整備が重要です。
株主総会・取締役会の決議と議事録を残す
役員報酬の金額は、株主総会または取締役会で決議する必要があります。議事録を正確に作成・保管しておかないと、税務調査で問題になる可能性があります。
まとめ:役員報酬の設定は慎重かつ戦略的に
役員報酬は、法人税・所得税・社会保険料の三つを総合的に考えて設定する必要がある、非常に奥深い節税策です。設定を誤ると、意図せず税務上の問題が生じたり、期待した節税効果が得られないこともあります。
また、役員報酬の最適額は会社の業績や家族構成、将来の退職金計画によっても変わります。「とりあえず昨年と同じ金額で」ではなく、毎年の状況に合わせて見直すことが賢明です。
税理士への無料相談をご活用ください
役員報酬の設定は、会社の状況によって最適な金額が大きく異なります。「自社にとって最も税負担が少ない報酬額はいくらか」「今期の業績を踏まえてどう設定すべきか」といったご相談は、税務の専門家である税理士にお任せください。
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